こっくりさんとテーブルターニング
こっくりさんは、日本の民間信仰から自然に生まれたものではないとされています。
19世紀の欧米で流行した「テーブルターニング」が伝わったもの、 というのが定説になっています。
テーブルターニングとは
複数人でテーブルに手を置き、テーブルが動くのを待つという降霊術です。
・参加者がテーブルを囲んで座る
・全員が手のひらをテーブルの上に置く
・質問をすると、テーブルが傾く・回る・脚が床を叩く
・その回数や向きで答えを読み取る
仕組みはこっくりさんとまったく同じです。 動くものがテーブルか硬貨かの違いしかありません。
こっくりさんとの対応
| テーブルターニング | こっくりさん | |
|---|---|---|
| 動くもの | テーブル | 硬貨 |
| 触れ方 | 手のひらを置く | 指を1本置く |
| 答えの読み取り | 傾き・回転・叩く回数 | 文字盤の上の位置 |
| 参加人数 | 複数人 | 複数人 |
| 仕組み | 不覚筋動 | 不覚筋動 |
**最大の違いは「文字盤があるかどうか」**です。
テーブルターニングは「はい/いいえ」や回数でしか答えられません。 文字盤を使うと、言葉として答えが出せます。
この文字盤化が、こっくりさんを日本で定着させた要因とされています。
「こっくり」という名前
テーブルが傾く動きを、日本語で「こっくり」と表現した—— という説明が広く伝わっています。
こっくり … 首を前に倒す動き。うなずく様子
→ テーブルや台が傾く動きに、この語が当てられた
のちに「狐狗狸」という漢字が当てられましたが、これは後付けです (→ 「狐狗狸」になる理由)。
名前が動きから来ているという点でも、テーブルターニング由来という説明と整合します。
なぜ19世紀の欧米で流行したのか
背景として押さえておくと理解しやすいです。
・19世紀半ばの欧米で【心霊主義(スピリチュアリズム)】が広く流行した
・「死者と交信できる」という考え方が、知識層を含めて受け入れられた
・その実践の一つがテーブルターニングだった
このとき同時に、科学の側からの検証も始まっています。 不覚筋動(ideomotor effect)という概念は、 まさにこの現象を説明するために19世紀のイギリスで提唱されたものです。
つまり「流行」と「その説明」が、ほぼ同時に生まれています。
日本への伝わり方
一般に、明治期に来日した外国人によって持ち込まれたとされています。
具体的な経路には諸説あり、確定していません。 このサイトでは断定せず、「そう説明されることが多い」という形で扱います (→ こっくりさんの起源)。
伝わったあと、日本で起きた変化が2つあります。
① 文字盤が使われるようになった(言葉で答えられるようになった)
② 狐・狗・狸という日本の民間信仰の要素が結びついた
→ 外来の遊びが、日本の在来の信仰と接続された
②が、こっくりさんを「日本の怪談」に見せている理由です。 仕組みは輸入品ですが、まとっている文脈は日本のものになっています。
現代に残っているもの
テーブルターニング … 欧米ではほぼ廃れた
ウィジャボード … 商品化されて残った(→ 別記事)
こっくりさん … 日本で独自に残った
同じ起源から、地域ごとに違う形で残っているのが面白いところです。
19世紀の降霊会という題材
まとめ
- こっくりさんは19世紀欧米のテーブルターニングが伝わったものとされます
- 仕組みは同じです。動くものがテーブルか硬貨かの違いだけ
- 最大の違いは文字盤です。言葉で答えられるようになりました
- 「こっくり」はテーブルが傾く動きから来ているという説明が広く伝わっています
- 不覚筋動の概念は、この現象を説明するために19世紀に生まれました。流行と説明がほぼ同時
- 日本では狐・狗・狸という在来の信仰と接続されました。仕組みは輸入品、文脈は日本のもの