こっくりさんは西洋から来たのか

「西洋から来た」と「日本のもの」が、どちらも部分的に正しいです。

何がどこから来たのかを分けると、混乱しなくなります。


分けて整理する

要素どこから来たか
仕組み(軽く触れたものが動く)西洋(テーブルターニング)
不覚筋動という説明西洋(19世紀のイギリス)
文字盤を使う形日本で加わった
狐・鳥居・稲荷日本の在来の要素
「こっくり」という名前日本語(傾く動きから)
終わり方の作法日本で育った(地域差が大きい)

仕組みは輸入品、まとっている文脈は日本のものです。


西洋から来たもの:仕組み

19世紀の欧米でテーブルターニングが流行しました(→ 別記事)。

・複数人でテーブルに手を置く
・テーブルが傾く・回る・脚が床を叩く
・その動きで答えを読み取る

こっくりさんと構造は同じです。動くものが違うだけです。

そして、この現象を説明するために提唱されたのが 不覚筋動(ideomotor effect) です。

説明のほうも西洋由来ということになります。


日本で加わったもの:文字盤

これが最大の変更点です。

テーブルターニング … 「はい/いいえ」や叩く回数でしか答えられない
こっくりさん    … 五十音の文字盤で、言葉として答えられる

言葉で答えられるようになったことが、日本で定着した要因とされています。

質問の幅が一気に広がります。 「好きな人は誰か」のような質問に答えられるのは、文字盤があるからです (→ 何を聞くのか)。


日本で加わったもの:狐と鳥居

在来の信仰の記号が接続されました。

・狐憑き・稲荷信仰という枠組みが既にあった
・「人ならざるものが人に働きかける」という説明が、すぐに使えた

→ なぜ「狐」なのか・稲荷信仰

これによって、外来の遊びが「日本の怪談」に見えるようになりました。


「海外版」という言い方について

サジェストに「こっくりさん 海外版」「アメリカ版」があります。

正確には順序が逆です。

✕ こっくりさんの海外版がウィジャボード
◎ 同じ起源から、日本では こっくりさん、
   欧米では ウィジャボード という形で残った

どちらかがどちらかの派生ではなく、兄弟にあたります (→ ウィジャボード)。


現在の残り方の違い

テーブルターニング … 欧米ではほぼ廃れた
ウィジャボード   … 商品として残った
こっくりさん    … 自分で作るものとして残った

同じ起源から、地域ごとに違う形で残っています。

この違いが「正しいやり方があるかどうか」を分けました。 商品なら形式が固定され、自分で作るなら地域差が生まれます(→ ウィジャボード)。


外来だったことが忘れられる

民俗学でよく見られる形です。

外から来たもの
  ↓
既にある枠組みで説明される
  ↓
元が外来だったことが忘れられる

こっくりさんは、この典型例と言えます。

現在では「日本古来の怪談」として受け取られていることが多いですが、 仕組みは150年ほど前に外から入ってきたものです。


こういう話に関心が向いたら


まとめ

  • 仕組みは西洋由来、文脈は日本のもの
  • 西洋から来たのは仕組みと不覚筋動という説明の2つ
  • 日本で加わったのは文字盤と狐・鳥居・稲荷
  • 文字盤があるから言葉で答えられます。これが定着の要因
  • 「海外版」は順序が逆です。同じ起源から分かれた兄弟にあたります
  • 外来だったことが忘れられるという民俗学の典型例

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