教室で起きた「集団パニック」はなぜ起きるのか
こっくりさんをやったあと、複数人が同時に体調を崩すことがあります。
この現象には名前がついていて、医学・心理学で研究の対象になっています。
集団心因性疾患という名前
集団心因性疾患(mass psychogenic illness) と呼ばれています。
・複数の人が、同時期に似た体調不良を訴える
・感染症や中毒などの物理的な原因が見つからない
・不安が共有されている集団で起きやすい
こっくりさんに限った現象ではありません。 学校・職場・地域で、さまざまなきっかけで起きることが知られています。
そして、いちばん多く報告されているのは学校です。
1973〜1993年に報告された発生の内訳(Jones 2000)
学校 … 50%
工場 … 29%
町・村 … 10%
その他 … 家庭・施設など
つまり「教室で起きた」という形は、例外ではありません。
**こっくりさんが原因で学校に多いのではなく、 【学校という場所そのものが起きやすい条件を持っている】**ことになります。
どういう順序で起きるか
① 誰か一人が体調の変化を訴える
→ めまい・吐き気・頭痛・過呼吸など
② 周囲がそれを見る
→ 「何か起きている」という認識が共有される
③ 自分の体の変化に注意が向く
→ 普段は気にしない些細な変化に気づく
④ その変化を「同じ症状だ」と解釈する
⑤ 訴える人が増える
→ ②に戻る。連鎖する
③がこの現象の核心です。
人間の体は常にわずかに変化しています。 普段は気にしないだけで、注意を向ければ何かしら見つかります。
こっくりさんで起きやすい条件が揃う
こっくりさんは、この現象の条件をほぼ全部満たしています。
□ 集団でやる
□ 不安・緊張が共有されている
□ 「何か起きるかもしれない」という予期がある
□ 逃げ場が無い(教室・同じ空間)
□ 終わり方が確定しない(「ちゃんと終われたか」が分からない)
最後の1つが効きます。
終わりに決まった作法が無いので、 「これで終わったのか」が確定しません(→ 終わらせ方)。 確定しない不安が、そのまま持続します。
「呪い」という解釈が生まれる理由
体調の変化は本当に起きています。
体調が崩れた … 事実
こっくりさんをやった … 事実
↓
「こっくりさんのせいだ」という解釈が生まれる
2つの事実は本当なので、解釈にも説得力が出ます。
そして解釈が生まれると、不安が強まり、さらに体調に出ます。 悪循環になります。
これが「呪われた」という感覚の作られ方です(→ 呪われたと感じたとき)。
起きたときにどうするか
現場でできることがあります。
① 場を分ける
→ 同じ空間にいると連鎖が続く。離れると収まりやすい
② 静かな場所で休ませる
→ 過呼吸なら、ゆっくり呼吸を整える
③ 「こっくりさんのせいだ」と言わない
→ 解釈を強化すると、症状が長引く
④ 体調が戻らない人は医療機関へ
→ 物理的な原因が本当にある可能性を先に除外する
①には根拠があります。
Jones(2000)による特徴のひとつ
「患者を発症した環境から分離すると、症状は速やかに消失する」
これは対処として、いちばん先に来るものです。
④を飛ばさないでください。 集団心因性疾患は「他の原因が見つからない場合」に当てはめる説明であって、 最初から決めつけるものではありません。
学校で禁止された背景
こっくりさんが学校で禁止されてきたのは、 この現象が実際に起きたためとされています。
詳しくはなぜ学校で禁止されたのかにまとめてあります。
このサイトは実在の事件の学校名・地名を書きません。
理由:
・在校生・卒業生・地域への不利益になる
・裏の取れない伝聞を、事実として流布することになる
→ 現象としては書く。固有名は書かない
「弱い人が起こす」わけではない
誤解されやすい点を書いておきます。
集団心因性疾患は、精神的に弱い人が起こすものではない
→ 誰にでも起きる。集団の状態のほうが条件になる
→ 「気のせい」「大げさ」という扱いは、症状を長引かせる
**訴えた人を責めないでください。**これがいちばん重要です。
まとめ
- 名前がついています。集団心因性疾患(mass psychogenic illness)
- 順序は一人が訴える → 周囲が見る → 自分の体に注意が向く → 連鎖する
- 核心は**「注意を向ければ何かしら見つかる」**こと
- こっくりさんは条件をほぼ全部満たします。とくに終わり方が確定しない
- 体調の変化は本当に起きています。だから「呪い」という解釈に説得力が出ます
- 対処は場を分ける・休ませる・原因を決めつけない・医療機関へ
- **弱い人が起こすものではありません。**訴えた人を責めない
- 報告の半数は学校で起きています。こっくりさん固有の話ではありません
出典
Timothy F. Jones, M.D.
「Mass Psychogenic Illness: Role of the Individual Physician」
American Family Physician, Vol.62 No.12(2000年12月15日)
米国家庭医学会の査読誌
https://www.aafp.org/afp/2000/1215/p2649
確認日:2026-08-26
このページは症状の診断・治療を扱いません。
体調が戻らないときは医療機関を受診してください。 「こっくりさんをやった」と伝える必要はありません。 伝えたくなければ、体調のことだけ伝えればよいです。