こっくりさんの起源──誰が始めたのか

「誰が考えたか」という問いには、答えがありません。

こっくりさんに特定の考案者はいません。 外から入ってきた遊びが、日本で形を変えながら広まったものです。


定説:テーブルターニングが伝わったもの

もっとも広く受け入れられている説明は、こうなります。

① 19世紀半ばの欧米で【テーブルターニング】が流行した
  → 複数人でテーブルに手を置き、動くのを待つ降霊術(→ 別記事)

② 明治期に来日した外国人によって日本へ持ち込まれた

③ 日本で【文字盤】が使われるようになった
  → 「はい/いいえ」だけでなく、言葉で答えられるようになった

④ 【狐・狗・狸】という在来の信仰と結びついた
  → 外来の遊びが、日本の枠組みに接続された

③と④が、日本で起きた独自の変化です。


「誰が始めたか」が特定できない理由

・特定の考案者が名乗り出た記録が無い
・商品として販売されなかった(ウィジャボードとの決定的な違い)
・口伝えで広がったため、最初の1回を記録した資料が残らない

ウィジャボードは商標登録されているので「いつ・誰が」が分かります。 こっくりさんは自分で作るものなので、記録が残りませんでした。


伝来の経路には諸説ある

ここは断定できません。

一般には「明治期に来日した外国人(船員とする説が多い)が伝えた」 と説明されることが多いのですが、具体的な人物・年・場所が確定した資料は確認できていません。

◎ このサイトの書き方
  「〜と説明されることが多い」「〜という説が広く伝わっている」
✕ 書かない
  「◯年に◯◯が伝えた」(裏が取れないものを断定しない)

これは ng-rules.md 6章「数字を書くなら出典を持つ。持てないなら書かない」によるものです。


その説が、どこから来ているか

ここを書いている記事が少ないので、書いておきます。

「明治17年ごろ、伊豆の下田に来た米国船の乗組員が伝えた」 という形で語られることが多いものです。

この説の出所は、井上円了(いのうえ えんりょう)です。

・明治の哲学者。東洋大学の創立者
・こっくりさんを実験で調べ、1887年(明治20年)に『妖怪玄談』を出した
・その中で、源流について書いている

つまり、いま広く流布している伝来の話は、 【円了が書いたこと】がそのまま伝わっているものです。

これが意味すること

 ◎ 明治20年の時点で、既にそう説明されていた(これは言える)
 ✕ 複数の独立した資料が同じことを裏づけている(そうではない)

だからこのサイトでは、年と場所を断定しません。

「円了がそう書いている」までは言えます。 「そのとおりだった」までは言えません。

この区別を飛ばして「明治17年に下田で伝わった」と書いている記事が多いのです。


明治期に流行した

伝来の経路は不確かでも、明治期に流行したこと自体は複数の資料で裏付けられています。

・新聞や雑誌で取り上げられた
・知識人が調査の対象にした
  → 現象を科学的に説明しようとする動きが、この時期に起きている
   (→ 明治の知識人はこっくりさんをどう見たか)

「流行した」と「科学的に検証された」が、日本でもほぼ同時に起きています。 これは欧米でテーブルターニングと不覚筋動の概念が同時期に現れたのと、同じ構造です。


「元ネタ」という言い方について

サジェストに「こっくりさん 元ネタ」があります。 ただしこの語には、2つの意味が混ざっています。

何を聞いているか答え
遊びの起源テーブルターニング(この記事)
作品の元ネタこっくりさんを題材にした創作作品のこと

このサイトでは前者だけを扱います。 作品名は書かない方針です(keywords.md の除外方針①)。


名前の由来

「こっくり」は、テーブルや台が傾く動きを表した語とされます。

こっくり … 首を前に倒す動き。うなずく様子
→ 動きの様子から名前がついた

「狐狗狸」という漢字は、後から当てられたものです。 音に漢字を当て、そこに狐・狗・狸の意味が読み込まれました (→ 「狐狗狸」になる理由)。

名前が動きから来ているという点も、テーブルターニング由来という説明と整合します。


まとめ

  • 特定の考案者はいない。「誰が始めたか」には答えが無い
  • 定説は19世紀欧米のテーブルターニングが明治期に伝わったというもの
  • 日本で起きた変化は2つ。文字盤の導入狐・狗・狸との結合
  • 伝来の経路には諸説あり、断定できない。年・人物を確定した資料は確認できていない
  • ただし明治期に流行したこと自体は複数の資料で裏付けられている
  • 「こっくり」は傾く動きから来た語。「狐狗狸」は後から当てられた漢字
  • 「明治17年に下田で」という説の出所は井上円了円了がそう書いているまでは言えるが、そのとおりだったまでは言えない

出典

井上円了『妖怪玄談』1887年(明治20年)
 著作権保護期間は満了している。青空文庫で全文が読める
 https://www.aozora.gr.jp/cards/001021/files/49375_40185.html

東洋大学「明治時代にこっくりさんの謎を科学で解明!
      東洋大学創立者・井上円了氏の妖怪研究」
 https://www.toyo.ac.jp/link-toyo/culture/youkai-hakase-enryou/

東洋大学史ブックレット6
 https://www.toyo.ac.jp/dp/enryo/booklet06/pageindices/index20.html

確認日:2026-08-26

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