こっくりさんを調べた研究はあるか

あります。しかも流行とほぼ同時に始まっています。

「オカルトだから誰も真面目に調べていない」という印象を持たれやすいのですが、 実際には明治期の日本でも19世紀の欧米でも、検証の対象になっています。


2つの流れがある

① 欧米(19世紀)… テーブルターニングを対象に、不覚筋動の概念が提唱された
② 日本(明治期)… こっくりさんを対象に、知識人が調査・実験を行った

どちらも「流行を受けて、それを説明しようとした」という動機によるものです。


① 欧米:不覚筋動という概念

19世紀半ば、欧米でテーブルターニングが流行しました(→ 別記事)。

これに対して科学の側から出された説明が、 不覚筋動(ideomotor effect) です。

主張:テーブルを動かしているのは、参加者自身の
   【自覚のない微細な筋肉の動き】である

この概念は、まさにこの現象を説明するために提唱されました。 つまり不覚筋動は、こっくりさん類の現象と同じ時代に、同じ理由で生まれたことになります。

現在も、この説明が標準的なものとして扱われています。


② 日本:明治期の調査

日本でこっくりさんが流行したとき、知識人がこれを調査の対象にしました。

・現象そのものを否定するのではなく、まず【何が起きているか】を観察した
・条件を変えた実験が行われた
 (参加者の構成・目隠しの有無・質問の内容などを変える形)

詳しくは明治の知識人はこっくりさんをどう見たかにまとめます。

この時期の日本では、「迷信を科学で解体する」という営みが盛んでした。 こっくりさんは、その代表的な題材の一つになっています。


何がどこまで分かっているか

整理すると、こうなります。

論点状態
硬貨が動く仕組み説明がついている(不覚筋動)
答えが参加者の予期を反映すること説明がついている
参加者が「動かしていない」と感じる理由説明がついている(自覚が無いため)
集団で体調不良が起きること説明がついている(集団心因性疾患/→ 別記事
外部の存在がいるかどうかこの現象からは分からない(→ 別記事

最後の1行が重要です。 「説明がついた」のは現象のほうで、存在の有無ではありません。


「科学的根拠」という言葉について

サジェストに「こっくりさん 科学的根拠」があります。 ただしこの語は、2通りに使われています。

① 「こっくりさんが本物だという科学的根拠はあるか」
  → 無い。外部の存在を示す証拠は確認されていない

② 「こっくりさんを説明する科学的根拠はあるか」
  → ある。不覚筋動・集団心因性疾患

同じ言葉で、逆のことを聞いている場合があります。 どちらを聞かれているかで、答えが変わります。


二重盲検という考え方

関連する現象では、検証の方法が確立しています。

ダウジングでは、 実行者にも立会人にも答えを知らせない条件(二重盲検)での実験が繰り返し行われ、 成績が偶然の範囲に落ちることが報告されています。

こっくりさんに同じ形の実験を当てはめると、予測は明確になります。

参加者の誰も答えを知らない質問 → 答えは出ない(出ても偶然の範囲)

これは不覚筋動の説明から、直接導かれる予測です。


調べたい人へ

・「不覚筋動」「ideomotor effect」で検索すると、心理学の文献が出てくる
・「集団心因性疾患」「mass psychogenic illness」は医学の用語
・明治期の調査は、民俗学・日本近代史の資料にあたる

このサイトは一次資料を再構成したものではありません。 関心があれば、元の文献にあたってみてください。


まとめ

  • 研究はある。しかも流行とほぼ同時に始まっている
  • 欧米では不覚筋動の概念が、この現象を説明するために提唱された
  • 日本でも明治期に知識人が調査・実験を行った
  • 説明がついているのは現象の仕組み存在の有無は分からない
  • 「科学的根拠」は2通りに使われる。本物だという根拠は無い/説明する根拠はある
  • 参加者の誰も知らない質問には答えが出ない、というのが検証可能な予測になる

関連