「こっくりさん」を漢字で書くと「狐狗狸」になる理由
「狐狗狸さん」 と書きます。読みは「こっくりさん」です。
狐(きつね)・狗(いぬ)・狸(たぬき)の3文字が並んでいて、 いかにも化けるものが集まった名前に見えます。
ただしこれは、後から当てられた漢字です。
順序が逆になっている
✕ よくある理解 … 狐・狗・狸を呼ぶ遊びだから「狐狗狸さん」という
◎ 実際の順序 … 先に「こっくり」という音があり、後から漢字が当てられた
音が先、意味が後です。
「こっくり」はどこから来たか
台やテーブルが傾く動きを表した語、という説明が広く伝わっています。
こっくり … 首を前に倒す動き。うなずく様子
「こっくりこっくり船をこぐ」の「こっくり」と同じ
こっくりさんの直接の祖先とされるテーブルターニングは、 テーブルが傾いたり脚が床を叩いたりする現象でした(→ 別記事)。
その傾く動きに「こっくり」という語が当てられた、という説明になります。
名前が動きから来ているという点は、テーブルターニング由来という説と整合します。
当て字が意味を作った
音に漢字を当てた瞬間、その漢字の意味が現象の解釈に流れ込みました。
「こっくり」という音
↓ 漢字を当てる
「狐狗狸」
↓ 字を読む
「狐と狗と狸を呼んでいるのだ」という理解が生まれる
当て字が、後から由来を作ってしまった形です。
この理解は、明治の時点で既にありました。
井上円了『妖怪玄談』1887年(明治20年)
「こっくりとは狐狗狸にして、狐か狸のようなる一種の妖怪物が、
その仕掛けたるところに乗り移りて……」
円了は、当時そう説明されていた内容として、これを書いています。
つまり流行していた明治20年前後には、もう「狐狗狸」の字が当てられ、 「狐や狸が乗り移る」という理解も一緒に広まっていたことになります。
ただし【誰が最初にこの字を当てたか】は分かっていません。 このサイトでは、そこを断定しません。
これは言葉ではよく起きることで、地名にも同じ現象があります (元は音だけの地名に漢字が当てられ、その漢字の意味が由来として語られる)。
なぜ狐・狗・狸だったのか
当てる漢字は、何でもよかったわけではありません。 この3つが選ばれた背景には、日本の在来の枠組みがあります。
狐 … 狐憑き・稲荷信仰。人に憑くもの、化かすものの代表
狗 … 犬神。西日本に伝わる憑きもの
狸 … 化かすものの代表。狐と対で語られる
どれも「人に憑く/人を化かす」とされてきた動物です。
つまり、外から来た遊びを説明するのに、日本にあった枠組みが使われたのです。 これが起源で書いた「在来の信仰と接続された」ということになります。
実際には「狐」が中心
3文字が並んでいますが、実際の呼び出しでは狐が中心になっていることが多いものです。
・「稲荷の使い」として説明される
・鳥居を紙に書く形が広く伝わっている
・「狐が来る」という言い方をする
狗と狸は、音を漢字にするときの都合で入った面が強いと考えられます。
**ただしこれは断定できません。**地域差もあります(→ 別の呼び方)。
表記のゆれ
現在は3通りの表記が使われています。
| 表記 | 使われ方 |
|---|---|
| こっくりさん | もっとも一般的。検索もこれが多い |
| コックリさん | 作品名・見出しで使われやすい |
| 狐狗狸さん | 由来を意識した書き方。古い資料に多い |
このサイトでは「こっくりさん」を基本にします。
ただし3表記とも検索されているので、本文に自然に混ぜています(keywords.md)。
まとめ
- **順序が逆。**先に「こっくり」という音があり、後から漢字が当てられた
- 「こっくり」は台が傾く動きを表した語とされる(うなずく様子)
- 当て字が、後から由来を作った。地名にも同じ現象がある
- 狐・狗・狸が選ばれたのは、どれも「人に憑く/化かす」とされてきた動物だから
- 実際の呼び出しでは狐が中心。狗と狸は音の都合で入った面が強い
- 表記は3通り。このサイトは「こっくりさん」を基本にする
- 明治20年前後には既に「狐狗狸」の字があった(円了『妖怪玄談』)。 ただし誰が最初に当てたかは分かっていない
出典
井上円了『妖怪玄談』1887年(明治20年)
著作権保護期間は満了している。青空文庫で全文が読める
https://www.aozora.gr.jp/cards/001021/files/49375_40185.html
東洋大学史ブックレット6(東洋大学)
https://www.toyo.ac.jp/dp/enryo/booklet06/pageindices/index20.html
→ 上の一文を引いているのはこちら
確認日:2026-08-26
「不覚筋動」の出典はこっくりさんはなぜ動くのかにまとめてあります。