こっくりさんと犬神・狗神

「狐狗狸」の狗にあたるのが、犬神(いぬがみ) です。

ただしこっくりさんの実際の呼び出しに、犬神はほとんど出てきません。 なぜ字だけが入っているのかを整理します。


犬神とは

主に西日本に伝わる憑きものです。

・人に憑くとされる
・特定の家系に関わるものとして語られてきた
・地域によって呼び名や性質が違う

この項目は慎重に書く必要があります。

犬神は、実在の地域・家系に対する差別と結びついた歴史を持っています。 このサイトは地域名も家系も特定しません。 民俗学の記述対象として、そういう伝承があったという以上のことは書きません。


なぜ「狗」が入ったのか

こっくりさんの実際の形を見ると、狗はほとんど登場しません。

・呼び出すのは「狐」とされることが多い
・文字盤には鳥居を書く(稲荷の要素)
・「稲荷の使い」として説明される

**にもかかわらず3文字書くのは、 音に漢字を当てるときの都合が大きい**と考えられます。

「こっくり」という音
  ↓ 漢字を当てる
「狐 狗 狸」
  ↓
3文字それぞれに、憑くもの・化かすものを当てはめた

3つに共通していること

当てる漢字として、この3つは自然な選択ではありました。

何とされてきたか
狐人に憑く/化かす。稲荷の使い
狗(犬神)人に憑く。主に西日本
狸化かす。狐と対で語られる

どれも「人ならざるものが人に働きかける」枠組みに入っています。

つまり、外来の遊びを説明するのに使える記号が、既に3つ揃っていたことになります (→ なぜ「狐」なのか)。


実際にはどれが呼ばれているのか

狐が中心です。

・「狐が来る」という言い方が広く伝わっている
・鳥居を書く(稲荷の要素)
・「稲荷の使い」という説明が定着している

狗と狸は、字としては入っているものの、実践には反映されていないと言えます。

これは「後から意味が読み込まれた」ことの証拠でもあります。 先に音があり、漢字が当てられ、その漢字の意味が由来として語られたわけです (→ 「狐狗狸」になる理由)。


「妖怪」という枠での扱い

こっくりさんは妖怪として分類されることもあります。

・狐狗狸さん、という名前を持つ存在として扱われる
・妖怪事典の類に立項されることがある

ただしこれは後付けの整理です。

もともとは現象の名前であって、存在の名前ではありませんでした。 「こっくり」は台が傾く動きを指していたのです。

現象 → 名前 → 存在、という順序で実体化していったと考えられます。


書かないと決めていること

✕ 犬神と結びつけられてきた特定の地域名・家系
  → 差別に直結する。民俗学の記述としても書かない

✕ 「◯◯地方の人は犬神を信じている」といった一般化
  → 根拠が無いうえ、不利益になる

◎ 「そういう伝承がある」という記述にとどめる

まとめ

  • 「狗」にあたるのは犬神。主に西日本に伝わる憑きもの
  • 実際の呼び出しに犬神はほとんど出てこない
  • 3文字揃ったのは音に漢字を当てるときの都合が大きい
  • 狐・狗・狸は3つとも「人ならざるものが人に働きかける」枠組みに入っていた
  • 実践は狐が中心。狗と狸は字だけ入っている
  • これは「後から意味が読み込まれた」ことの証拠になる
  • このサイトは特定の地域名・家系を書かない

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